ブックサイトレビュー(1)読売新聞(本よみうり堂)
Posted at 06/12/06 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
今回から何回か、ウェブ上で公開されている読書関係のサイトについてレビューを書いていきたいと思います。まず最初に読売新聞のウェブサイト、読売オンラインの読書サイト、『本よみうり堂』です。
ウェブに読書関係のサイトは数え切れないほどありますが、(私のサイトもその一つです・笑)その中でも新聞社のやっている読書サイトは大変充実しているといっていいでしょう。新聞には学芸欄(文化欄)があり、週に一度は数ページに渡って書評が掲載されています。私は現在は諸々の事情から新聞は購読していませんが、取っているころは読書欄が楽しみでした。書評委員が自分の贔屓の学者や文化人になると、その人の推薦する図書は少なくとも立ち読みくらいはしたものでした。
そのような意味で、新聞社はもともと充実した書評を行えるバックボーンを持っているといっていい訳で、ある意味個人のサイトでは太刀打ちできない、充実した内容を持っているのは考えてみれば当然なのですね。
私は今までこうした新聞の読書サイトはあまり利用してきませんでしたが、この機会に活用方法を考えて、生かしていきたいと思っています。
さて、『本よみうり堂』。
主要な構成は、トップページの下に「書評」「文庫」「新書」「出版トピック」「著者来店」「コラム」「ブログ」「こども」「コミック&マガジン」と並んでいる。
「書評」は水曜、日曜の新聞に掲載された書評が転載されていて、私が読んだものでは『千年、働いてきました』が掲載されている。文学もあれば政治・外交関係もあり、戦略論もあれば歴史、思想書もある。こうして見てみると、現在の「読書シーン」というものが反映されていて、どう言うものが世の中のメインストリームの教養(教養と断言していいのかどうかはちょっと疑問の点も残るのだけれど)であるのかということが再確認できる。私が関心を持ったのは『アメリカ外交の大戦略』『累犯障害者』『院政』『パックスブリタニカ』『インテリジェンスの歴史』『加藤高明と政党政治』などがあった。この中で実際に読むものがどれだけあるかはわからないが、本屋で見かけたらおっと思うのではないかと思う。
「文庫」では読んだ本は(1ペ-ジ目には)一冊もなし。『京の路地裏』『コンラッド短編集』は読んでみたいと思ったが。「新書」では読んだものは『グレート・ギャツビー』のみ。読みたいと思ったものは特になし。このあたり、あまりに点数が多すぎて、私の趣味とはあまり重ならないんだろう。
「出版トピック」は、年間ベストセラー1位が『国家の品格』であるとか、「本嫌いの子には朗読を」という記事、「SF大賞に萩尾望都」だとかいろいろな出版に関するニュースのようなものが集められている。「著者来店」は本の著者とその本の紹介といったコーナー。
「コラム」ではなんといっても今月は「空想書店」。「店主」に選ばれた人が自分のお勧めの本を紹介して仮想の「書店」を作るコーナーだが、今月の店主はなんと諸星大二郎で、彼が選りすぐった「役に立たない本」を集めた『無用堂』である。集められたものをみると『鼻ほじり論序説』だの『突飛なるものの歴史』だの、いったい誰が買うんだろうというような本ばかり。私は読まなかったが大学時代に異常にウケていた友人がいた『鼻行類』が入っていたのは可笑しかった。(しかも諸星はまだ読んでないらしい)
「ブログ」は書店員お勧めの読書日記、「こども」ではクマを追った写真家が書いた『生きるために変える生態』などが紹介されていてこれも興味深い。「コミック&マガジン」はほとんど趣味が一致しないようだ。
こうしてみると、最も使えるのが「書評」のコーナー。「コラム」は好きな作家が書いていたら読みたい、という感じ。振り返ってみて、大体新聞の書評というものはそうだったなと思う。
ただ意味があると思ったのは、過去に掲載された分をデータベース的に読むことが出来る点で、書評が載った古新聞を捜すのはけっこう大変だったのだが、それを容易にしているということはありがたい。書評自体を話題にするときもウェブにあると共有するのは簡単だし、その点では役に立つだろうと思った。また出版関係のニュースもまとめられていて、もちろんそういうことが本業なので当たり前だが、メリットに数えられる。
結論。メジャーな新聞の強みと弱い点と、両方現れている。万人向けの標準的な書評を送り出すという点では、新聞に勝るものはないかもしれない。しかし個人に特化し、無限の書籍やマンガの海の中からこの一点、をほかならぬ「あなた」に送るという点では弱い。つまりそういうもっと狭い趣味の共通する人に対して書評を送り出すという点では個人も必ずしも不利ではないということだ。
逆にいえば、最大公約数的な書評を送り出すのがある意味新聞の使命なのかもしれない。そういう意味で、質の高い書評を今後も期待したい。
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