宮廷音楽家エステルハージは初めてのミサ曲を書いていた。神に捧げるこの曲を、彼は祈りながら書き、天恵を感じては楽譜に一つ一つフレーズをしたためていった。彼の前には田園の風景が広がる、彼の部屋はシンプルな漆喰の壁で覆われているだけなのだが。彼は音符で見たものを封じ込める。彼の曲は、聞く人にもその風景を思い起こさせる。何より大事なのは、彼の曲を聞く人たちは自然に神の恩寵を感じ、この風景の一つ一つがすべて神によってわれわれに与えられたものであるということを感じてその感動に涙してしまうのだ。彼の曲は曲というより一つの奇跡だった。