塩野七生『ローマ人の物語』がついに完結

Posted at 06/12/18 Comment(0)» Trackback(0)»

塩野七生『ローマ人の物語』がついに完結。第15巻『ローマ世界の終焉』が15日、発売された。ちょうど今書店には山積みになっているのでごらんになった方も多いだろう。

産経新聞の書評サイトに塩野七生のインタビューが掲載されている。15年かけて、世紀をまたいでひとつの連作を完成させるということは、並大抵のことではない。淡々と一年一作のペースで書き上げてきてはいたが、やはり「自分の羽根を一本一本抜きながら美しい織物を織り上げていった『夕鶴』のつうのよう。丸裸になった気分がします。しばらく休んで羽根を生やさなければオーブンに入れられそう」という感想を持っているそうで、すべてを出し切った、という感じなのだろうなと思う。

「私は叙述は好きですが、解説は大嫌いなんです」という言葉はよくわかる。ウェブでものを書いているとどうしても解説を書かざるを得ないときが多いのだけど、基本的に私も叙述をしたいタイプで解説のふりをして叙述をすることが多い。話しているうちに止まらなくなるパターンだ。血湧き肉躍る楽しさがなければ、物を語ったり文章を書いたりしちゃいられないもの。

「ローマ帝国のみが普遍国家を作りえた」、という視点はやはり独特のものだという気がする。ローマの普遍性、というのはその通りだと思うけれども、結局はユダヤ=キリスト教的なドグマチックな信仰の中にローマ世界は沈んでいった。日本という国もまた、ある種の普遍性を持った「くに」だと思うのだけど、最近キリスト教的な(あるいは市場至上主義的とかアメリカニズムと言い換えてもいいが)ドグマに冒されつつあるようで少々心配だ。そういうことを読みながら考えてしまう。

私は、文庫で読んでいるのでまだ単行本で10巻、『すべての道はローマに通ず』までしか読んでいない。完結まではまだまだ楽しみがある、ともいえる。

しかしそれにしてもある種の超大作。実際、お疲れさまと伝えたい。


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