空に白い箱が浮かんでいました。そこに黄色い風船がたくさん、風に流されてやってきました。風船たちはみんな、白い箱にあいさつしました。
「君はどうして浮いているの?」
白い箱はびっくりしました。
「知らないよ!ぼくは生まれた時から浮いているんだ。なぜ浮いてるかなんて考えたことない。」
黄色い風船たちは笑いました。
「理由も分からないまま浮いてるのかい?君はずいぶんのんびり屋さんだねえ」
風船たちは鈴のような声で笑いました。白い箱は傷ついて言いました。
「ぼくを決めつけないでよ。ぼくはのんびり屋さんなんかじゃない。ただここに浮いているのが好きなだけなんだ。天気はいいし、ほら、飛行機雲が出てる。あそこにはきっと、飛行機の墓場があるんだ。墜落してしまった飛行機のたましいが、すうっと白い尾を引いて、天国に向かって行くんだ。」
風船たちはひそひそ話をはじめました。
「変わった子だねえ」
「おかしいのかな」
風船たちはぞろっと集まると、白い箱に言いました。
「ごめんね、君はきっと一人で幸せなんだね。ぼくたちはたくさんの人たちがいる所じゃないとだめなんだ。黄色い風船は、人々に愛されてナンボだからね。君みたいに一人で浮いていると、ぼくたちは自分が何なのか分からなくなってしまう。だからぼくたちは、人間がたくさんいるところに行くね。日向ぼっこの邪魔をしてごめん。」
本当に邪魔だったよ。と白い箱は少し怒っていたのですが、そういうことを隠して言いました。
「ううん、ちっとも。ぼくは一人でここに浮いているのが好きなんだ。じゃあね。」
黄色い風船たちは、見むきもせずに行ってしまいました。
白い箱は一人で浮いていましたが、なんだか悲しくなりました。