王女は息を飲んだ。目の前に突然現れた男が、パソコンを打っている。
「何をしているの?」
王女が尋ねても男は返事をせず、一心不乱にパソコンを打ち続けている。
「返事をしなさい!」
王女は声を荒げた。もともと王女はそんなはしたない女ではない。しかし、今目の前で何が起こっているか分からず、頭の中が混乱してしまったのだ。男はゆっくりと顔を上げて言った。
「申し訳ありませんプリンセス。つい私自身の仕事に集中してしまい、失礼をいたしました。」
「お前はだれ?」
男は苦笑いした。
「さすがプリンセス。年上の男に向かってお前とは。」
王女は少し恥じらった。私は礼儀を失したのだろうか。
「言葉を元に戻しましょう。あなたは高貴な身分なのですか?」
男は笑った。
「私どもの世界には、高貴な身分の方はほんのわずかしかいません。あなたほどの身分の方は」
「あなたの世界?」
「はい、私はプリンセスを私の世界に呼び出したのです。」
王女はあたりを見回して息を飲んだ。さっきまで王宮の小部屋で兄王子の仕打ちに腹を立て、一人で泣いていたのにここはまるで見たことのない世界。狭い部屋の中に所狭しと本が積んであり、怪しげな機械が音を立てている。
「ここはどこなの?」
「ここは私の部屋ですよ、プリンセス。」
「私をどうしようというの?」
「どうにもしません。せっかく来ていただいたので、少しお話でもしませんか」
「お前のような者とする話はない!すぐ王宮に私を戻しなさい!」
「まあいいじゃないですか。私もあなたのような美しい女性をしばらくは鑑賞していたい。ここはあなたの世界にはないものがたくさんありますよ。少しゆっくりして行ったらどうです。」
そう言われて王女は持ち前の好奇心が起こって来た。
「私の見たことがないものとはなんじゃ?」
「例えばこれはどうです。」