彼は、魚の群を見つけた。地中海のエメラルドの海は、銀色に輝く魚たちを包み込んで、静かに揺れていた。ナポリからアマルフィに向かう船の中で、太陽の光り輝く空の下で緑色の海を眺めていた。
やがて彼はアマルフィの港に着いた。アマルフィの街は白く、切り立った崖に白い家がびっしりと並んでいた。13世紀から人々が営々と築き上げた街。一次は地中海世界を制覇した街。今ではナポリを訪れる観光客たちの、知る人ぞ知る美しいスポットになっていたが、世界遺産に登録されてからは見知らぬアジアの国々からの観光客も増えたらしい。しかし彼はそうした観光客ではない。彼はこの街で、鮨を握っているのだ。