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安倍晋三『美しい国へ』

美しい国へ

文藝春秋

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新宿で下車し、東京駅まで来て食事を済ませ、八重洲ブックセンターで本を物色して安倍晋三『美しい国へ』(文春新書、2006)を買う。まさに安倍の「政権宣言」の一書だといってよいだろう。まだ読みかけだが、共鳴するところは多い。微妙に感覚が違うな、というところもあるが、それはまあ仕方がないだろう。章名を上げてみると、「はじめに―『闘う政治家』『闘わない政治家』」、「第一章 わたしの原点」「第二章 自立する国家」「第三章 ナショナリズムとはなにか」「第四章 日米同盟の構図」「第五章 日本とアジアそして中国」「第六章 少子国家の未来」「第七章 教育の再生」「おわりに」となっている。まだ第四章の途中までしか読んでいないので全体像はわからないが、やはり「国家はどうあるべきか」、ということを熟考し、実践している政治家であるということはよくわかる。「闘う政治家」であることを意識している点ではある意味『大政翼賛会に…』に出てくる政治家たちの姿勢と共通しているし、数少ない政治家らしい資質を持った政治家だと思う。

いろいろエピソードを引用しているが、吉田松陰が好んだ孟子の「自らかえりみてなおくんば、千万人といえども吾行かん」という言葉を引用している。これはわたしの出身高校の校訓でもあったのでよく知っているが、吉田松陰との絡みは初めて知った。それからナチスとの融和を進めるチェンバレン内閣に野党を代表して質問に立ったアーサー・グリーンウッドが首相の答弁にたじろいでいると、与党席から「アーサー、スピーク・フォー・イングランド」という声が飛び、その声に勇気付けられて歴史的な演説を行った、というエピソードが書かれていた。これは知っていたが、なんど読んでも感動するものはする。早くから外務省の妨害や親中・親北朝鮮派の中傷にめげず拉致問題を取り上げ続けた安倍だからこそ、こういうことを書いても説得力があるわけで、誰にでもできることではないと思う。

国民的人気という点では共通していても、そういう意味では安倍晋三は小泉純一郎とは全く違う個性の持ち主だといってもいい。小泉ほど首脳外交に向いているかどうかがわからないところがいまのところ安倍の難点だと思うし、官房長官なら強硬外交に成功しても首相としては未知数ではあるが、新しい時代の個性的な総理大臣になることは間違いないだろうと思う。やはり昔の政治家は大人物かなとは思うがあまりに時代的な違いからかセンスの面で理解しにくいところが多いが、安倍のストレートなセンスはわたしなどには非常に理解しやすいし共感もする。ただそのストレートなところが危険だと思う人たちがいるのは私としても理解は出来る。しかし、現在の世界の政治家を見てもわかるように、ストレートな表現のほうが外交上は理解されやすく、プラスになると思われるので、いいほうに出てくれればいいなと思っている。

福田康夫は結局総裁選を降りてしまったが、靖国問題を争点にすることを嫌った、というのはある意味その通りだろう。またミサイル問題での安倍の手腕とそれへの評価を見て流れは決したと思ったのかもしれない。確かに70の首相よりは50台の首相のほうが世界の趨勢からいえば望ましいだろう。村山元首相のようにサミットのイタリア料理が当たって腹を下すようでも困る。

「漫画好き」の麻生や「自転車狂」の谷垣などある意味現代的な意味で個性的な総裁候補たちだが、まあやはり安倍だろう。(7.22.)

  

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